「あの時の姫野さん
スリッパを借りて
僕に渡してくれたでしょ?」
「あれは勝手に体が……」
「おとなしそうな感じなのに
行動力がすごいなぁって
姫野さんのこと、尊敬しちゃった」
「尊敬なんて……
あれはただの暴走だからね」
「僕がありがとうって言ったら
顔を真っ赤に染めちゃうし」
私
そんな恥ずかしい顔してた?
「そのあと姫野さんが
『ありがとうって言ってくれてありがとう』って
頭を下げて
逃げるように去ってっちゃったでしょ?
こんな可愛い生き物
この世に存在するの?って
クスクス笑っちゃったんだ」
ひゃぁぁ。
そんな風に思われてたの?
「可愛い」なんて言われ慣れてないから
顔がほてってきちゃった。
「それが、僕の初恋」
ひょえ?
渚くんの初恋が……私?



