「姫野さん……ごめん……」




さっきまで
初恋が実って幸せ満開だったのに

急に不安が襲い掛かってきたよ。



渚くんの表情も
暗く陰っているから

余計に心配が増殖してしまう。




「僕ね、姫野さんと一緒に
 登下校はできないんだ」



なんで?


そう渚くんに聞きそうになって
私は口をつぐんだ。



好きな人の口から
『亜美さん』の名前を
聞きたくなかったから。




渚くんと亜美さんの関係に
私は嫉妬している。



亜美さんとじゃなくて
私と一緒にいて欲しいなって
はっきりと思っている。


それなのに


大好きな人に嫌われるのが
怖い私は



「いいよ、いいよ。
 渚くんはバス通学だしね。
 バス停は学校のすぐ前だもんね」



飛び切りの笑顔で
良い人ぶることしかできない。