消えないで…僕の初恋



「渚くん。
 もうすぐ、卒業式だよ?」


卒業式なのに
制服のボタンがないって
先生に叱られるんじゃ……


「卒業式だからだよ」


「えっ?」


「ずっと憧れてたんだ。
 高校の卒業式は
 大好きな子に僕の物を
 身に着けて欲しいなって」



「ブレザーの第二ボタンをあげるって
 今時しないみたいだけど。
 昔の映画に出てきて
 僕もあげたいなって」と

苦笑いを浮かべた渚くん。


嬉しいよ。
すっごく嬉しい。


だから


「卒業式の間
 ずっと指にはめとくね」


でも……

「卒業証書をもらう時は
 ポケットに入れといてもいいかな?」


「いいけど……」


「渚くんからもらった宝物。
 先生に没収されたくないんだ、私」



私は微笑んだ。

肩上の髪を揺らしながら
ニコニコって。


だって
幸せ過ぎなんだもん。


高校最後の日に

私の初恋が
叶っちゃったから。