「さてと。灯ちゃん、お腹は空いてる?」
そんな私を優しく見つめて、軽く伸びをしながら和泉さんは問う。
本当は少し空いていたけれど、このまま和泉さんと一緒にいたらせっかく回復しかけていた心臓がまたやられてしまう。というかもうすでにやられかけている。
空いたと言ったらきっと夕飯もご一緒することになるだろうから、ここはもう"空いていない"の一択しかない。
「いっ、いえっ!本読みながらお菓子たくさん食べちゃったので、そんなに空いてません!」
「はは、そっか。お菓子、結構買い込んじゃったもんね。僕も久しぶりにこんなにお菓子摘んだなぁ。じゃあこのまま帰ろうか」
火照った頬を携えてそう答えれば、多分察してくれたらしい和泉さんのその言葉を合図に、私たちは帰り支度を済ませて帰路に着くことになったのだった。
「日もだいぶ傾いてきたし、駅から1人で歩かせるのは心配だから、帰りはちゃんと家まで送らせて?」
もうすぐ朝待ち合わせた駅前のロータリーというところで信号待ちをしている時、和泉さんが言った。
「まだそんなに暗くないですし、仕事帰りとかいつも1人で帰ってるので全然大丈夫ですよ?」
でもそんな私の答えに、彼は困ったように眉を下げる。



