「ーー……灯さん。……灯さんってば!聞いてます?」

「……へっ⁉︎……あ、ごめん、全然聞いてなかった」

「もう……!灯さん、何か今日朝から様子おかしくないです?休みボケですか?」

「……あー。はは、そうかも……」


ゴールデンウィーク明けの出勤日、私は珠理ちゃんに連れられてあのオシャカフェにランチに来ていた。

いつも通りのつもりだったんだけど、どうやらいつもとは何かが違っていたらしい。

確かに、珠理ちゃんにオシャカフェに誘われて文句の1つも言わずについて来てしまったこと自体、すでにおかしかったかもしれない。

選んだ3つの小鉢のうち、春限定メニューの春キャベツを使ったロールキャベツをつつきながら、私は苦笑を浮かべた。


「って灯さん!私の目は誤魔化せませんからね?いつもポーカーフェイスな灯さんがそうなってる時って、大体イケオジが絡んでますよね⁉︎」

「……うっ」


珠理ちゃん鋭い……。

彼女はふわふわしているようでいて、実は結構周りをよく見ているタイプ。

それは仕事以外のところでも発揮されていて、普段から細かいことによく気づく。

いつだったか、誰にもバレないように押し隠していた私の体調不良に気づいたのも珠理ちゃんだった。


「さぁ、吐いて下さいっ」


手に持っていた菜の花と筍の胡麻和えが入った小鉢をドンっ、とお盆の上に戻した珠理ちゃんが、向かいの席からグイッと身を乗り出して来る。