「え?」


引っ込められ、レジャーシートの上に置かれたゼリーの瓶。

行き場のなくなった手は和泉さんに引かれ、完全に不意をつかれた私の上半身はいとも簡単に和泉さんの方へ引き寄せられた。


「ーー僕は、灯ちゃんの前では最初から割と強引だったと思うけど、こんな風に」


耳元に唇を寄せて妖艶さを滲ませた甘い声でそう囁かれてしまえば、身体中の血がぶわっと一気に沸騰したような感覚に陥る。

今日は朝から何度も和泉さんに調子を狂わされて来たけれど、いつものほのぼのとしたランチタイムにすっかり油断していた。

なななな何何何………⁉︎何かもう今日は過度に負荷がかかり過ぎて、心臓壊れそうなんですけど………!


「忘れないで、灯ちゃん。僕はこれから3ヶ月、全力で君を口説くつもりだからね。灯ちゃんにとって意外な僕がもっと出てくるかもしれないよ。だから、覚悟しておいて」

「〜〜〜………っ、」


1ミリも動けずにいる私の耳元で、和泉さんはさらに追い打ちをかけた。

それは直接耳の中に注ぎ込まれているようで、今までに感じたことのないゾクゾクとした感覚が背中を駆け上がる。


………やられた………。

心臓、完全にとどめを刺された………。