比呂さんのデリバリーは、控えめに言ってもサイコーだった。

「うまうまです!」と、他愛ない話をしながらもパクパクかぶりついてあっという間に完食した私を見て、和泉さんは嬉しそうに笑う。


「良かった。灯ちゃんは本当に美味しそうに食べるよね」

「だって美味しいですもん」

「見ていると、こっちまで幸せな気持ちになる」

「そうですか?」

「うん。その顔が見たくて、今日は比呂くんにデリバリー頼んじゃった」

「デリバリー、やってないのに?」

「うん」


ちらりと隣を見やってそう問えば、やっぱり悪びれる様子もなく彼は悪戯っぽく口角を持ち上げた。


「あははっ。和泉さんて、意外と強引なところありますよね」

「意外?」

「はい」

「灯ちゃんの中で僕は一体どんなイメージになってるの?」

「品行方正で物腰柔らかくて大人で紳士なイメージ、です」

「……うーん、それはちょっと買い被り過ぎじゃないかな」


私の並べたイメージに苦笑しながら、和泉さんはアイスティーをひと口飲む。

そして紙袋から「はい、これはデザート」と差し出してくれたのは、瓶詰めされたゼリー。

透き通った橙(ダイダイ)色に浮かぶオレンジの輪。


「わー、これも美味しそうですね……!ありがとうございます」と受け取ろうとすれば、


「ーーーそんなイメージに油断してると、知らないよ?」


不意にそんなセリフが落とされて、伸ばしかけていた手は空を切る。