紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】



……って、ちょっと待って、違う。今注目すべきはそっちじゃない。絶対そっちじゃない。


私、今一瞬抱きしめられたよね⁉︎

なっ、何なの⁉︎

もう周りの視線が怖くて顔を上げられない……!


それに数歩先を行く和泉さんの手と私の手は、今間違いなく繋がっている。


……何か、何かすごく自然に手を繋がれてるし……!

視線を上げられない分、無駄にそこに目がいってしまう。


さっき和泉さんに抱き締められた感触だとか匂いだとか、おまけに今繋がっている手だとかを意識してしまえばもう混乱の極みで、さらに顔に熱が上るわ手に汗掻きそうになるわ、心も身体もてんやわんやの大騒ぎ。

25年間生きてきて、こんな事態に陥ったことは未だかつてない。

彼は、ひょっとして私を殺しにかかってるんだろうか。

だって、私の心臓は和泉さんのせいで今朝から負荷が掛かりっぱなしだ。



そしてそんな状態のまま辿り着いた先は、今まで通って来た所と比べると人口密度の少ない大きな木の下。



「恭加さん、遅いっす。つーかうち、デリバリーやってないんですけど」



すると突如木の向こうからそんな声が聞こえてきてびっくりしていれば、白シャツに黒のギャルソンエプロンを纏い、紙袋をぶら下げたお兄さんがひょっこりと顔を出した。