「あれ?もしもーし?灯ちゃん?」

「……はっ、はいっ!」


その状況を理解したと同時に再び呼びかけられたその声に弾かれた私は、バッとスマホを拾ってベッドの上で正座する。


「今、電話大丈夫かな?」

「だ、大丈夫です!」


和泉さんと話すのはあの告白の日以来。

和泉さんと連絡先は交換していたけれど、まさか休日に電話が掛かってくるとは思ってもみなかった。

普段直接耳にするよりは若干低く響くその声に、神経を集中させる。


「良かった。灯ちゃん、ゴールデンウィークは何か予定は入ってる?」

「いえっ、特には何もっ!」


力いっぱい即答する私に、和泉さんがふ、と笑みを溢したのが空気の振動で伝わって来た。

おおう、馬鹿正直に答え過ぎたか……?


「そっか、じゃあ遠慮なく誘えるね。……灯ちゃん、今度の水曜日、僕とデートしてくれませんか?」


そう思っていたところに、まるで穏やかな微笑みが目に浮かぶような優しい声色が耳に流れ込んで来る。

そしてそれが脳へ届くや否や、私は今日2度目のフリーズをした。

……デート……。


「デ、デート⁉︎」 

「そう、デート。灯ちゃんも会社お休みでしょ?ふじさわ食堂で会えないから、たまには別の場所で一緒にランチしよう」

「え、えっと……」