……佐原くんの言う通りだ。

あの告白からもこの1ヶ月半のランチタイムからも、和泉さんが誠実な人なんだってことは十分過ぎるほど伝わってきている。

でもだからこそなぜ私なのだ、と余計に混乱し、戸惑い、現実から目を背けようとしたのだ。


「だったら2ヶ月だか3ヶ月だか知らないですけど、断るにしてもその期間はきちんとその人に向き合うのがその人に対する誠意だと思いますよ。まぁ何かあったらまた中村頼ればいいですし、オレもいますし」 

「……それは非常に頼もしい、です……」

「だからそんなに深く考えずにお試しさせてもらったらいいんじゃないですか?いろいろと」


"いろいろ"の所にやけに含みを持たせた言い方をした目の前の彼は、ニヤリと口角を持ち上げた。


「……佐原くんはさ、私のこの状況をちょっと楽しんでるよね?」

「……さあ?どうでしょう」


綺麗に微笑んではぐらかした佐原くんは淡々と晩酌を再開し、しばらくして目を覚ました珠理ちゃんもソフトドリンクに切り替えて再び参戦したこの何とも奇妙なメンバーでの飲み会は、開始から2時間ほどでお開きとなったのだった。