そう。あの後。



"だから3ヶ月、僕とお試しのお付き合いをしてくれませんかーーーー?"



そう言った和泉さんは、そうだ、と一旦私の頬から手を離し、茫然自失の私の手に名刺を握らせた。


"詐欺師だと思われたままじゃ、チャンスも貰えそうにないからね"


そう悪戯っぽく笑って。


"改めて、灯ちゃん。僕にチャンスをくれますか?"


そして再び私の頬を包み、真剣な色を宿した和泉さんの瞳に囚われた私はそこで思わず頷きそうになってしまったけれど、いやいや待て待てと正常に働かない頭で何とか自分にストップをかけた。

これは毎週水曜日、一緒にランチをすることを提案されて了承した時とは訳が違うぞ自分!と。


"……いやいやっ、無理です無理です!付き合うとかしたことないですしお試しでも無理です!"


依然頬を挟まれたままの状態でありながらも精一杯全力でお断りすれば、


"……灯ちゃん。了承してくれないなら僕はこのまま灯ちゃんにキスしちゃうけど。いいの?"


ふ、と口角を持ち上げ多分に色気を含んだ視線で私を絡め取った和泉さんは、ゆっくりとその端正なお顔を近づけてきた。