「灯ちゃん。今から僕に襲われたくなければ、ここは素直に甘えておきなさい?」


すると慌てて僕から手を離した灯ちゃんは、「あ、ああああ甘えさせて頂きますっ!」と、すごい勢いでベッドの中にすっぽりと隠れてしまったのだった。


……ああ、可愛い。


そんな彼女を見ていると、ついもう少しだけ揶揄いたくなる。


「あ、そうだ」


だから寝室を出る直前、僕は彼女を振り返った。


「はっ、はい……⁉︎」


それに反応してひょこっ!とベッドから顔だけ出した灯ちゃんの、黒くて艶やかな瞳を捉えて言う。


「僕は灯ちゃんのその可愛い声で呼んでもらえるなら、それが名字でも名前でもあまり(こだわ)りはなかったけれど。でも、これから名前で呼ばれたら、僕の下に組み敷かれていた昨日の灯ちゃんのあの扇情的な表情と声を思い出して、ムラムラしちゃうかもねーー?」と。


「〜〜〜………っ⁉︎」


彼女の声にならない声ににっこり微笑んで、今度こそ僕は寝室をあとにした。



……さて、朝食が出来る頃にはリビングにやって来るであろう灯ちゃんは、果たして僕の名前を呼べるだろうか?

彼女の真っ赤に熟れた困り顔を想像して、思わず笑みが溢れた。



ーー愛おしくて愛おしくて堪らない。

呼び方なんて、本当は何だって構わないんだ。

その声で、僕を求めてくれるのならば。

君さえ側に、いてくれるのならば。

だって、それだけで僕は十分に幸せで、満たされているのだからーー。




ーfin♡ー