配属先も一緒で、同期たちの間ではいつの間にかすっかりワンセットで見られるようになった佐原と私。


最初のきっかけは、たぶんブラックコーヒー缶とつぶりんみかん。


あれは研修何日目だっただろう。たぶん2日目とか3日目あたり。


「あ」


研修の休憩中。研修棟の中庭にある自販機でつぶりんみかん(みかんのつぶつぶが入ったオレンジジュース)を買おうと思っていたら、間違えてブラックコーヒー缶のボタンを押してしまった。

ボタンを押す直前、違うそれじゃない、と頭では思ったのに手が止まらなかった。

きっと研修で消耗したせいだ。さっきの電話対応研修のロールプレイングで、私は根こそぎ気力も体力も奪われた……。

ガコン、と出てきたそれを手に取り、しばらく眺める。

よりによってなんでブラック……。

ブラック、飲めないのになぁ。

眺めていても飲めるようになる訳じゃないから、もう一度つぶりんみかんを買い直した。

さてこのブラックコーヒー、どうするか……。

自販機の前にあったベンチに座って、その隣に行き場のないブラックコーヒー缶を置いてみる。

その時、自販機に向かって歩いてくる人がいた。

あ、あれは確か次の研修で一緒の班になった……、


「……えーっと。さ、さ、さ……」

「………。」  

「さ、さ、さ………」

「………。」

「あの、砂漠みたいな名前の……」

「………覚え方、雑過ぎない?中村さん。佐原だから。佐原 葉(さはら よう)

「ごご、ごめん!佐原くん!私まだ全員の名前、把握出来てなくて……!」

「別に、いーけど」