「ちゃんと挨拶するのは初めてだね。初めまして、和泉です。いつも灯ちゃんがお世話になってます」


たらふく飲んで食べて喋って。


21時を回る頃に車で迎えに来てくれた和泉さんと、店先で2人が初めて対面した。


「佐原です。こちらこそ、お世話になってます」

「……ああ……!ペアリングが眩し過ぎる……!イケオ……、じゃなかった、和泉さん、灯さんのこと、よろしくお願いしますねぇぇぇ!」


お酒を一杯しか飲んでいないとは思えないテンションで突然ガシッ!と和泉さんの両肩を掴む珠理ちゃんを、佐原くんが冷静に止めた。


「こら、中村」

「はは、珠理ちゃん、会えて嬉しいよ。うん、これから一生放さないつもりだから、安心して任せてね」

「うっ……、尊い……」


2人の前で惜しげもなく吐き出された甘いセリフに珠理ちゃんは卒倒しそうになっていたけれど、恥ずかし過ぎて身の置き所のない私の方は、もう真っ赤な顔で縮こまるしかない。


「2人とも、良かったら一緒に送って行くよ?」


和泉さんのその申し出に、答えたのは佐原くんの方だった。


「ありがとうございます。でも大丈夫です。中村の酔いを覚まさせながら帰るので」

「はいっ!お2人のお邪魔は決して致しませんっ!」


言いながら、今度は珠理ちゃんがピシッと敬礼して見せる。


「ちょ、珠理ちゃん……!」

「そう?じゃあお言葉に甘えて、灯ちゃんだけ貰って行くね」

「どうぞどうぞ!」


……もう……!


そうして和泉さんに差し出された私は、2人の生温かい目に見送られながら彼の車に乗り込んだのだった。