ちゅ、ちゅ、と濡れた音だけがこの静まり返った部屋にやけに響いて、恥ずかしさが煽られる。
でもそれも最初のうちだけで、身体の芯にポッと熱の灯る感覚がして、次第に頭は蕩けて真っ白になり、すぐに何も考えられなくなった。
「ふ……、ん……っ」
吸われたり食まれたり、唇が甘い刺激を受けるたびにおよそ自分のものとは思えない鼻に抜けるような甘やかな声が漏れてしまい、それに驚いた私はうっすらと目を開けてしまう。
でも、すぐにそれを後悔した。
だって、そこには今まで見て来たどの和泉さんでもない、情欲を露わにした雄の顔をした彼がいて。
「……可愛い」
その彼がこの至近距離で、甘さをまぶした声でそんなことを言うから、顔も身体もブワッと一気に熱くなる。
するとさっきまで私の反応を確かめるみたいな余白が残されていたキスが、次に降って来た時にはどんどん性急に深くなって。
僅かに開いた唇から侵入して来た舌は、無意識に逃げようとした私のそれを絡め取って、戸惑っていた私を芯から蕩けさせていく。
その都度隙間から漏れる甘ったるい声は、漏れた側から和泉さんに飲み込まれてしまうようだった。
二度目のキスが序の口だったということを、ここでやっと理解する。
優しいのに荒々しい、まさに息つく暇もないほどの濃厚なキスにグズグズに溶かされた頃、ようやく唇が解放された。
もうくったりと力が抜けていて、呼吸もままならない。
トロン、とした顔で未だ近くにある和泉さんの顔を見つめていれば、その直後、私の身体が突然ふわっと宙に浮くから、「……ひゃっ⁉︎」と弱々しい驚きが口をついて出る。
「ここでこれ以上したら、もうベッドまで行く余裕無くなりそうだから」
滾る熱をその瞳に孕んだまま困ったように眉を下げた和泉さんは、私を軽々と横抱きにした。
「やっぱりキスだけで止まれそうにもない。……灯ちゃん。いい?」
そして、余裕のなさそうな色っぽさを滲ませた表情と声で私に問う。
ーーそんなのもう、答えは決まっている。
「……ど、どんと来い、です……」
緊張できゅ、と締まる喉から何とか絞り出したのと同時に和泉さんの首にしがみつけば、ふ、と笑みをこぼした和泉さんは「ありがとう」と、私の額に小さなキスをひとつ落とした。



