「ーーねぇ灯ちゃん。僕が上がったら、さっきの続き、してもいい?」


そして直接耳元で囁かれた、和泉さんの隠しきれない欲と色香を含んだ声。

その意味を理解した時、それが身体中を駆け巡り、まるで全身が心臓になったみたいにドクンドクンと脈打つ。


「ああは言っても、さすがに今日はちょっと我慢するつもりだったんだけど……。こんな灯ちゃんを前にしたら、ね」


和泉さんの艶っぽい吐息が耳をくすぐって、ふるりと身体が震えた。


……どうしよう。こんな自分は、はしたないのだろうか。


だって、さっきのキスの感触を思い出して、身体が急速に熱を持ち始めている。

私もさっきの続きをして欲しいと……、思ってしまっている。

もう一度、あの優しい唇で触れて欲しいと……。


でも、そんな風に思っている自分がとてつもなく恥ずかしく思えて、それをどう伝えたら良いのか分からなくて。

自分の中に生まれた初めての何とも言えない感情を前に、それを伝える術を見失って閉口していると、先に口を開いたのは和泉さんだった。


「ーーごめん、ちょっと急ぎ過ぎたね。今のは忘れて。灯ちゃんに好きになってもらえたことだけで僕は十分幸せだから。無理はさせたくない。だからこういうのは灯ちゃんのペースでゆっくり、ね?」


ーー本当に、和泉さんはどこまでも優しい。

私の迷いを察して抱きしめていた腕を解き、怖がらせないようにと湧き上がる熱をその瞳の奥に沈めて穏やかに笑う。

だけど違う。違うよ、和泉さん。

私が迷っていたのは、そこじゃない。

その表情を見つめながら、私は慌ててぶんぶんと首を横に振って和泉さんのTシャツの裾をギュッと掴んだ。


「……灯ちゃん?」

「だ、大丈夫です……!私も続き、して欲しいと思ってます、から……!」

「………っ、」


咄嗟に私の口から出た言葉の意味を反芻した和泉さんが、私から目を逸らして片手で口元を覆った。

と同時に彼の耳がみるみる赤くなっていく。

それを見て、さすがにこれはあまりにもどストレートに気持ちを伝え過ぎたかと恥ずかしさが込み上げて来た私の顔も、熟れたリンゴのように真っ赤になった。