「はぁ……。本当に、灯ちゃんには敵わないなぁ……」
熱を孕んだ瞳に囚われて、視線が逸らせなくなる。
「……このままキス、してもいい?」
無駄に色気を醸し出しているくせに、そこにまるでおねだりをする子供みたいな可愛さまで滲ませたその問い掛けに、私の心臓はもう爆発寸前だ。
「〜〜……っ、この前は、そっ、そんなの聞かずにしたじゃないですか……!」
「うん、あの時は了承も得ずにごめんね?でも言ったでしょ?こんなおじさんでも、頭で考えるより先に身体が動いちゃうこともあるって。だけど今は、ちゃんと灯ちゃんの口から聞きたい」
可愛らしく小首を傾げているけれど、その顔は、確実に答えなんて分かっている顔だ。
……本当にもうこの人は……!
「……いっ、和泉さんの意地悪……っ!ダメな訳ないって、分かってるくせに……!」
この辱めになぜかちょっと泣きそうになりながらも、頬に触れる和泉さんの手に自分のそれを重ねてこれ以上ないくらい真っ赤な顔で叫んだ私に、
「……あー、もう……。可愛過ぎて限界です」
そう呟いた和泉さんは次の瞬間、掬うように私の唇を奪った。
二度目のそれはとても熱くて、一瞬だけだった一度目とは違って、そこからまるで気持ちを溶かし込むように角度を変えて何度も丁寧に触れて来る。
それがとても気持ち良くて。
息を詰め、されるがままに長いまつ毛を伏せた色っぽい和泉さんを熱に浮かされたようにポーッと見つめるしか出来ないでいたら、ゆっくりと開いた焦げ茶の瞳とぱち、と視線が絡んでしまい、ペロっと下唇を舐められた。
「ひゃっ……⁉︎」
そして目だけで困ったように笑んだ和泉さんが、
「……こら。ちゃんと目閉じて、鼻で息して?」
僅かに離した唇の隙間から、熱い吐息と共に言葉をこぼした。
「……やっ、だってキスの仕方なんて分かんな……っ、」
その隙に詰めていた息を吐いて何とか肺に酸素を取り込みながら訴えれば、彼はなぜか艶のある小さなため息を吐く。
「……全くこの娘は、そんな顔して無自覚に……」
「……え……?」
「……いや、何でもない。じゃあこれから僕が、嫌ってほど教えてあげる」
その扇状的な微笑に、ふる、と背筋が甘く震えた。
まずは目を閉じようか、そう甘く囁いたあと、私の頬からするりと後頭部に移動した手がぐっ、と私を引き寄せる。
再びまつ毛を伏せた和泉さんの唇が触れそうな気配に、私は従順に目を閉じた。
ーーだけどその時。



