「ああ、この前は灯ちゃんが恭加の想い人だって分かってすぐ、こっそり外したからね。バレてなくて良かったわー」
「……な、なんで……!というか、どうして私だって分かったんですか……⁉︎」
「ふふ、灯ちゃんが分かりやす過ぎるのよ。隣で私の発言にいちいち反応してくれちゃうんだもの、あれは誰だって察するわ。それに比呂くんの目線でもね」
あの時のことを思い出したのか、彩也子さんが苦笑を漏らした。
「ねぇ灯ちゃん、知ってる?相手のことを好きかどうかわからない時ってねぇ、恋敵の登場が一番手っ取り早くて効果覿面なのよ?」
「恋敵……」
「元カノなんて、まさに好敵手でしょ?だからちょっとお節介かなとは思ったんだけど、灯ちゃんが自分の気持ちに気づくきっかけになればいいなって、指輪を封印しておばちゃん、一芝居打たせてもらっちゃいました」
「……彩也子さん……」
漫画なら、今絶対"テヘペロ"という文字を背負っているに違いない。
そんな表情を浮かべた彩也子さんを前に、いろいろと衝撃的過ぎて私の身体からへなへなと力が抜けていく。
確かに、私が和泉さんへの気持ちに気付けたのは彩也子さんの登場とあの発言があってこそだったけれど……!
「おっと……!だって、あんなに恋愛に淡白だったあの恭加がよ?本気で口説きに掛かってるだなんて知っちゃったら、そりゃあもう応援したくなっちゃうでしょう?そしたらたまたまさっき比呂くんのお店に行く途中でバッタリ会って、じゃあ一緒に飲もうよ!って誘って来てみれば……」
そんな私を支えてくれながら彩也子さんは続ける。
「さっきの恭加。私、付き合ってた時だってあの人のあんな余裕のない姿見たことなかったわ。嫉妬とか執着とか独占欲とか、そんなのとは全く無縁だった男が本気で恋をすると、あんな風になっちゃうのねぇ」
そう言ってくすりと可笑しそうに笑ったあと、彼女はポン!と、今度は勢いよく私の両肩を叩いた。



