「……はい」


……もしかしなくても、そうだ。


私はぐ、と唇を噛み締めて肯定する。


一体どんな言葉が返ってくるのか。……怖い。

思わずギュッと目を瞑って彩也子さんからの次の言葉を待っていた、その時。


私の身体にドン!と衝撃が走った。


でも決して彩也子さんに危害を加えられたとか、そういうんじゃない。

そういうんじゃなくて、気がつけば私は、彩也子さんにすごい勢いでガバッと抱き締められていた。


…………え?


「良かった!ちゃんと自覚できたんだね、自分の気持ち!たぶんそうなんじゃないかなぁ、とはさっき思ったんだけどね、やっぱりだった!」


そう言って彩也子さんは私から少し身体を離すと、ふわっと、それはそれはとても嬉しそうに微笑んだ。


でも、私は全く状況が飲み込めず、まさに鳩が豆鉄砲を食ったような表情で固まったまま微動だにできない。


「ふふ、灯ちゃん、安心して?私、ニューヨークでお利口にお留守番してる、大好きな年下の旦那様がいるから」


だ、旦………、って、


「えっ⁉︎」

「そう、旦那様」


素っ頓狂な声を上げた私に彩也子さんがぴら、と左手の甲を見せて悪戯っぽく笑う。

 
私は目を見張った。


だってその薬指には、確かにプラチナのリングがキラリと輝いていたから。


「ちょっ、ちょっと待って下さい……っ!だって彩也子さん、もう一度頑張っちゃおうかなって……!それに確か、この前は指輪、してませんでしたよね……⁉︎」


そうだ。

この前一緒に飲んだ時、意識して見てた訳じゃないけれど、その左手の薬指には何もついていなかったはず……。