「和泉さ……!」
思いがけず会えたことが嬉しくて駆け寄ろうとした私の足は、だけどそこでぴたりと止まってしまう。
なぜなら和泉さんが、ひどく悲しげな、傷ついた表情を浮かべていたから。
……ひょっとして今の……、見られてた……?
……そしてたぶん、和泉さんは何か誤解をしている、気がする……。
「あ、あの……!」
直感的にそう思った私は、慌てて弁解しようともう一度和泉さんの方へ足を踏み出そうとした。
だけどその時。
「……いったーい、恭加!もう、なに⁉︎急に立ち止まんないでよね!鼻ぶつけた!」
和泉さんの後ろから鼻をさすりながらひょっこりと顔を出したその人物に、私の足はまたもや前に進む力を失ってしまった。
「…あれ?灯ちゃん?また会えたね!」
私を見つけた途端、まるで夜に咲く向日葵のように綻んだ眩しい笑顔。
コロコロと鈴を転がしたような、可愛らしい声。
ーーそれは、約1週間ぶりに会う彩也子さん、だった。
2人の並んでいるその姿は、私が想像していたよりももっとずっと素敵でお似合いで。
ついに、2人は再会してしまったんだ……。
胸の奥がズキン、と痛む。
「……2人は、知り合い?」
和泉さんが、驚いたように私を見ながらポツリと呟いた。
「うん、先週比呂くんのお店で会ってね、一緒に飲んだ仲!あれあれ?そちらもお知り合いー?」
「ああ……」
でも答えたのは彩也子さんで。
ニヤニヤしている彩也子さんにツンツンと腕を突かれた和泉さんが、曖昧に微笑む。
「私たちちょうど比呂くんのお店に飲みに来たところなんだけど、灯ちゃんは?」
「……あ、私は職場で偶然再会した中学の同級生とちょうど飲んできた帰りで……」
私の言葉に樹くんがペコ、と会釈をした。
「何だぁ、残念!じゃあ今度また一緒に飲もうね⁉︎」
「はい……」
私たちもこれから飲みに行くところだと思ったのだろう、彩也子さんががっくりと肩を落とした。
相変わらず人懐っこくてくるくる変わる表情が魅力的な人だなぁ……。



