びっくりして落としそうになりながらも画面を見れば、案の定和泉さんからの着信。

逸る気持ちを抑えて、一度深呼吸をしてから通話ボタンを押した。


「も、もしもし……!」

「あ、灯ちゃん?お待たせしてごめんね。もうすぐ灯ちゃんちの前に着くんだけど、あと5分くらいしたらちょっと出て来られる?」

「えっ⁉︎うっ、うちの前ですか⁉︎」


だけどあまりの予想外な展開に、私の口から思わず素っ頓狂な声が漏れた。


「うん」

「わざわざこっちまで来てくれたんですか⁉︎場所、指定して頂けたら私がどこへでも出向いたのに……!」

「ん、灯ちゃんならきっとそう言ってくれるだろうなと思って、敢えて直前まで連絡しなかったんだ。お土産、結構たくさん買って来ちゃったから重いし、夜に灯ちゃん呼び出すのも心配だし、だったら会社に戻る前に僕から灯ちゃんに会いに行っちゃおうかと」


会いに行っちゃおうかと、って……。


「和泉さん、出張帰りでお疲れなのに……」

「あ、灯ちゃん僕のこと、おじさん扱いしてる?」

「ちっ、ちがっ!そうじゃなくて……!」

「あはは、冗談だよ。心配してくれてありがとう。でも全然大丈夫。飛行機でも休んできたし、運転しているのは僕の秘書だからね。僕は後部座席でふんぞり返ってるだけ。楽なもんだよ?」

「……ぷっ。ふんぞり返って……」


和泉さんがふんぞり返ってるだなんてそんなこと絶対ないのに、戯けてそう言う彼の姿を想像してしまったらつい吹き出してしまった。


「……あ、もうすぐ着くよ。灯ちゃん、出ておいで?」