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そして時計の針はそろそろ夜6時を回ろうかというところ。
私は和泉さんからいつどこに呼び出されてもすぐに出掛けられるように、珠理ちゃんが昨日買った服の中からコーディネートしてくれたクルーネックにブルーベースの小花柄で前開きタイプのシフォン素材のワンピースに着替え、しっかりメイク直しもしてスタンバイしていた。
午後の便で帰ると言っていたけれど、香港から羽田空港までは5時間くらい掛かるらしい。
だとするともうそろそろ連絡が来てもおかしくない頃だろうかと、さっきから私はそわそわしながらスマホを握りしめて部屋の中を行ったり来たり。
ワンピースの裾も、珠理ちゃんにアレンジしてもらったローポニーテールも、忙しなく揺れている。
……あぁ、和泉さんを前にして、私はちゃんと上手く気持ちを言葉に出来るだろうか。
でもこういう時って、そもそもどういうタイミングで切り出せばいいんだろう?
ご飯に行く時間は取れないと言っていたけれど、お茶をする時間くらいはあるのかな?
だとしたらその時に……?いや、お店の中での告白はさすがにちょっと周りの目も気になるし、そしたら別れ際、がベストかな?
でも忙しそうな和泉さんのことだから、お茶をする時間すらなくてただお土産を渡されて終わりっていうパターンもあり得る?
ど、どうしよう、シチュエーションが読めなさ過ぎて、告白のシュミレーションが全っ然出来ない……!
そして土壇場で焦り出す私の手の中で、ついにスマホがブルっと震えた。



