「ぷっ、あはは……!灯さん、仕事はいつも何でもそつなく器用にこなしちゃうのに、手先は意外と不器用だったんですねぇ?」

「うっ……!だって今までアイラインなんて引いたことなかったし、手がプルプルしちゃって全然安定しないんだもん……!」


翌日、日曜日の午前9時。

珠理ちゃんが私の部屋で、私の引いたガタガタのアイラインを見てケラケラと笑っている。



昨日、あれから本当に和泉さんは私が家にたどり着くまでの15分間ずっと相手をしてくれて。

お仕事は大丈夫ですかと心配する私に、もう大体片付いてるから大丈夫、と和泉さんが聞かせてくれた香港での出来事や食べ物の話はとても面白くて、美味しそうで。


『あ、灯ちゃん、今よだれ垂らしたでしょ?』

『たっ、垂らしてません!』

『はは……っ』


こんな風に和泉さんと他愛もない話をするのは久しぶりで、とても楽しかった。


『じゃあまた明日、連絡するね』


それは、"あれ?駅から家までの15分ってこんなに短かったっけ?"と感じてしまうほどに。


そして名残惜しくも和泉さんとの通話を終えたあと、私は速攻で珠理ちゃんに連絡をした。