「特別なお手入れをしていなくてこの肌のキメの細かさ、羨ましいですねぇ」

「あ、ありがとうございます……」

「ですよねぇ。つるつるでもちもちで、つつきたくなりますよねぇ」

「あ、中村さーん、今はつつかないで下さーい」

「はいっ、すいませーん」


今にも私の頬をつつこうと隣で人差し指を構えた珠理ちゃんが、手際良く私の顔にファンデーションを塗っている美容部員、高木さんに止められた。


ここはお洒落な商業ビルの1階にあるコスメフロアのとある一角。

梅雨入り前の独特な空気と蒸し暑さが纏わりつく、翌日土曜日。

珠理ちゃんとこのビルのある最寄駅で待ち合わせをして、1番に連れてこられたのがここだった。

明るくて煌びやかな店内には、首にブルー系のスカーフを巻き、ブラックの制服を着こなした綺麗な店員さん数名と、いかにも今風なお洒落なお客さん数名がいて。


「じゅ、珠理ちゃん?私こういうキラキラしたお店はちょっと……」

「大丈夫です、灯さん!私もいますし、ここ、私の仲良くしてもらってる美容部員さんのいるお店なんです」


遠目から見てもキラキラ眩しくて敷居の高過ぎるお店に尻込みする私を、珠理ちゃんは構わずグイグイと引っ張って行った。