「……まぁだから不安になる要素、ないと思いますけど」
落ち着け中村、と珠理ちゃんをなだめながらも、こちらを見やって優しく眦を下げた佐原くん。
でも、私は赤くなっている顔を自覚しながらも曖昧に笑い返すしか出来ない。
こうやって励ましてくれる2人の気持ちがこんなに嬉しいのに。私も、和泉さんならきっと大丈夫って思いたいのに。
それでも、どうしても不安で胸がモヤモヤしてしまうのは……。
「ーーそれでも灯さんが不安になっちゃうのは、自信がないからですよね?」
佐原くんの言葉を受けて、両手の隙間から全てを見透かしたように私を真っ直ぐ見つめて来る珠理ちゃんに、たった今ビールを喉に流し込もうとしていた手がぴたりと止まった。
「……どうして、」
「その元カノと自分を比べて、自分には魅力がないって、思ってるんですよね?」
「うっ……。珠理ちゃん、エスパー……?」
昨日から思っていたことをズバズバと言い当てられてしまい、もはやぐうの音も出ない。
「分かりますよそのくらい。灯さんが自分のこと、過小評価し過ぎなのは知ってますから」
両手の隙間から、上目遣いにじとりとそのくりくりの瞳を向けて来る。
「ーーだから私、決めました!」
すると今度は突然両手でドン!とテーブルを叩いて身を乗り出して来た珠理ちゃん。
その衝撃に、テーブルの上のドリンク2つが一斉に漣を立てた。



