「えっ⁉︎えーと、ちょ、ちょっと待って!……もん、もん、もん……」
「………ふはっ!」
眉間に皺を寄せてもんもん唸っている珠理ちゃんに、佐原くんが堪らず、と言った感じで吹き出した。
「やっ、知ってる!知ってるよ⁉︎今ど忘れしちゃって出て来ないだけでっ!」
「……ふーん?」
「本当だもん!」
「……ふ、ふふ、あははっ……!」
疑いの眼差しを向ける佐原くんに、焦る珠理ちゃん。
そんな風にじゃれ合っている2人を見ていたら自然と笑いが込み上げて来て、目尻に浮かんだ涙をそっと拭う。
「……2人とも、ありがとう。笑ったら何か、少しスッキリした」
突然お礼を言い出した私をぽかん、と見た珠理ちゃんが、ハッと慌て出す。
「……って、灯さん……!佐原のせいで脱線しちゃって、私たち、まだ何の力にもなれてないんですけど⁉︎」
「うん、でも2人がいてくれるって思ったら、それだけで心強い」
こんな私を気に掛けてくれて、心配して集まってくれる。そんな2人の存在が、今はとても有難い。
このじわっと心に染み込んでくる温かさは私が今まで味わったことのない種類のもので。2人のおかげで知ることが出来たものだ。
「……灯さん……。ぎゅってしてもいいですか。っていうか今、無性にぎゅってしたいです!」
珠理ちゃんが、なぜか突然目の前で腕を広げる。
「え?ここで?ダメです」
「何でですかー!もう!灯さんのツンデレ!」
「……デレた記憶はないんだけど……?」
何かもう、この2人のおかげですでに少し心が軽くなっていて。
それだけで十分な気がしたけれど、それでも2人は私の話もちゃんと聞いてくれた。



