紳士な副社長からの求愛〜初心な彼女が花開く時〜【6/13番外編追加】

動揺する私のジョッキにカチンとグラスを合わせ、ビールを実に綺麗な所作で喉に流し込んだ佐原くんがニッと口角を持ち上げる。


「深町さん、案外分かりやすいんで」

「わっ、分かりやす……⁉︎」


そんなこと、初めて言われた……。


「ふふ、灯さん、確かに普段はそんなに分かりやすい方じゃないんですけど、イケオジが絡むと途端に分かりやすいんですよ」


助けを求めるように珠理ちゃんの方を見れば、少し下がった眉の下にあるつぶらな瞳に見つめ返されてしまった。


「という訳で、実は灯さんの気持ちの変化には薄々気づいてて。だからSOSが出た時は全力で力になろうと思っていたんですが、今日の灯さんはさすがに放っておけず……。SOSが出る前にお節介を焼いてしまいました……」

「珠理ちゃん……」


こくりとカシスウーロンをひと口飲んで、「へへ……」と照れくさそうな珠理ちゃんを前に、じんわりと心に広がる温かさ。それがちょっと涙腺をも刺激して来て、私は無駄に瞬きを繰り返す。

おかしいな。私の涙腺、こんなに弱くなかったはずなんだけどな。


「つー訳で深町さん。まぁこんな頼りになる後輩が2人もいるんで、愚痴でも悩みでもノロケでも、遠慮なくどうぞ」

「そうですよ、灯さん!3人寄れば何とやら、ですよ!」

「………中村、ちなみにその何とやらの部分、濁さずにちゃんと言えるか?」


"遠慮なくどうぞ"と柔らかく解していた目元を今度はすっと細めて、きゅうりを摘みながら佐原くんが隣の珠理ちゃんをチラッと見やる。