まさに今が2度目の緊急事態。

和泉さんへの恋心を自覚して、だけど彩也子さんの存在に不安になって。

この状況は、恋愛初心者の私には手に余る。


「……珠理ちゃん」

「はい」

「緊急事態、ヘルプ、です……」

「……!はいっ、ガッテン承知の助です!そうとなれば、緊急招集かけときますね!」


私の出したSOSに頼もしくそう答えるや否や、ポケットからスマホを取り出して何やら高速で打ち込み始めた珠理ちゃんだけど……。


「緊急招集……?っていうかガッテン承知の助って……」

「あー、ふふ、私実家暮らしなんですけど、家では結構その手の死語、未だにバンバン飛び交ってるんです。よっこいしょーいち、とか、オッケー牧場、とか?父が昔からそういうタイプで、だから私もたまに出ちゃうんですよねぇ」


珠理ちゃんがスマホから顔を上げて、ちょっと戯けて昭和の死語を連発する。

今時のこんな可愛らしい女子の口から飛び出したとは思えない死語に、思わず「ぷっ」と吹き出してしまえば、


「あ、眉間の皺、消えましたね?」


と、今度は嬉しそうにまた私のそこをつんつんする珠理ちゃんの優しさに、ちょっと泣きそうになったのは内緒だ。