ーー昨日は結局あの後大通りでタクシーを拾い、帰宅してから和泉さんには約束通りその旨をメールしたのだけれど。

好きと自覚してしまったからだろうか、そんな何でもないメッセージを送るのすら緊張してしまって、なかなか送信ボタンが押せなくて困った。


"お帰り、灯ちゃん。安心しました。戸締まりはしっかりしてね。また連絡します。おやすみ"


ようやく送ったそれにすぐ返って来たメッセージを見て、たったそれだけにきゅんとして、和泉さんに会いたいなぁ、なんて思っちゃった私は結構重症かも知れない。

……一度自覚してしまえば、何て簡単。

こんなの、もう完全に恋じゃないか。


でもそれと同時に頭をもたげるのはやっぱり彩也子さんのことで。

昨日からずっと、言いようのない不安がまるで霧のように、もやもやと私の心を漂っていた。



「灯さん、何か昨日より元気なくないですか?イケオジ不足ですか?」


結局給湯室で加藤先輩に貰ったプリンを、ミルクを多めに淹れて渋みを中和させた紅茶のお供に頂いて、邪念を払ってから自分のデスクに戻った。

すると、隣の席の珠理ちゃんが私の顔を心配そうに覗き込む。