クールな幼なじみが本気になったら

「そんなの、あだ名みたいなものだろ」

「それじゃあ、ダメなの?」

「ああ。ちゃんと呼んでほしい。『律希』って」


――『律希』。


そういえば、物心ついたときからずっと『りっくん』だった。

『律希』だなんて、呼んだことがなかった。


「もう“幼なじみ”じゃないんだよ。俺は、しずくの“彼氏”なんだから」


『りっくん』は、幼なじみとしての呼び名。

だけど、その幼なじみだったりっくんは、今ではわたしの『彼氏』。



「…律希」


小さく呟いてみて、わたしのほうが恥ずかしくなってしまった。


りっくんのはずなのに、まるでりっくんじゃないみたい。

名前で呼んだだけで、こんなにもりっくんを男の子として意識してしまうなんてっ…。


真っ赤になった頬を隠すように、両手で顔を覆うわたし。