あたしは桜子- 売れないモデル-

風輝は、桜子を追いかけた。


「待てよ。行くな、ここにいろ!」

「だめよ、あたし耐えられない。かず君がタケルの兄さんなんて…。」

「桜子、僕は君が必要なんだ。父さんが死んでから、ずっと一人で生きて来たんだ。君にいてほしい。」


風輝は、桜子を抱き締めた。
桜子は、風輝の言葉にはっとした。
一人で生きて来たんだ…それは私も同じ…風輝の言葉は、桜子の心に沁みた。


「桜子、君の傷ついた気持ちを癒すのは、僕には出来ないのかい?」


「そうじゃない…、あたし…こんなあたしがかず君の側にいても…。かず君は今まで、静かに暮らしていたのに。」


「君のせいじゃないよ。君のせいじゃない。タケルとの事も、僕は気にしてない。
僕達は、もっと幸せになってもいいんだ。幸せで普通の生活を作ろう。もう、いいんだよ。これからの人生のほうが、ずっと長いんだ。」


「かず君…。」


桜子は、風輝と暮らす決心をした。マンションを引き払い、作詞やエッセイの仕事も辞めた。今度こそ本当に、普通の生活をする為に。