タケルは、アメリカへ帰った。


桜子は、また風輝とサンドイッチを作り、コーヒーを入れる毎日だった。

自分のマンションへは、あまり帰らなくなった。


「桜子、いっそ引っ越してくれば?部屋代もったいないし。」


「うん、でもあたしはかず君の恋人でもないし。お客さんが誤解するよ。かず君に悪いもん、彼女出来なくなるよ。笑。」


「僕は構わないよ、それでも…。むしろ、そのほうがいい。」


「え?なんて?」

「もう、まだ気付かないの?僕は好きなんだ…君が。初めて会った時からずっと…。」


桜子は黙ってしまった。風輝は笑って言う。


「いいさ、いつまでも待っているよ。君の心が融けるのを。笑。」


「かず君…。」


桜子は、風輝の気持ちに気付いていた。そして、自分の気持ちにも。
でも、未だに癒えない心の傷に、苛立ち苦しんでいた。特別な世界で生きて来た、桜子の深い悩みだった。

その時、一人のお客が入って来た。そして、一番奥の席に座った。