桜子は、ため息をつくと座り込んでケータイを見つめていた。


「桜子、やっぱり会うべきだよ。会って話するべきだよ。辛くても。」

桜子は風輝を見た。優しい目…。


「桜子、この店が休みの日に、ここで話するといいよ。そのほうが人目につかない。」


「ありがとう。かず君てお兄ちゃんみたい。こんなお兄ちゃんが欲しかったな。笑。」


「ははは、いつでもお兄ちゃんは、君の味方さ。笑。」


桜子は、決心した。タケルと会って話を聞こう。
風輝が口を開いた。


「桜子、過去はもう戻ってこない。君がどんな世界にいて、どういう思いをしてきたかは僕には推測しかできない。でも、今の君が本当の桜子だと僕は思う。毎日、楽しそうに働いている君を見ると僕も嬉しいよ。迷っているなら会って話をして、これからは前だけを見て生きるんだ。」


風輝はそう言うと、コーヒーカップを洗い始めた。


桜子は、風輝を頼もしく思った。
そしてもう一方では、タケルの事が気掛かりだった。