やがて桜子は、風輝の助けもあり、無事に車の免許を取った。

そして気が付いたら、いつの間にか桜子も、お店を手伝うようになっていた。

風輝と一緒に、サンドイッチを作り、コーヒーを入れた。


お店を手伝うのは、楽しかった。タケルの事は、考えないようにしていた。
こんな日常が幸せだって事は、桜子が一番良く知っていた。そして、もう独りではない。風輝も同じように思っていた。
その幸せが揺らいで行くなんて、2人には予想できない事だった。


ある日、桜子のケータイにメールが届く。タケルからだった。


「タケルからだわ。」


風輝が心配そうに見ている。


「ねえかず君、タケルからメールが…。どうしよう。」


桜子は、動揺していた。


「話があるって…。私ね、引っ越した事も言ってないの。」


風輝が聞いた。


「君は会いたくないの?」


「私ね、私、タケルにどうしても聞きたい事があるの。でもね、会いたいかって聞かれると、微妙なんだ。もう、忘れたい。」


風輝は、切なそうな顔をして桜子を見た。