あたしは桜子－ 売れないモデル－

桜子は席を立つと、カウンターに座った。


「ほんと気にしてないから心配しないで。」


桜子がそう言うと、店主は安心したように顔を上げた。


「あの、あなたの名前はなんて言うの？」


「僕？僕は森って言うんです。もりかずき。森に風が輝くと書くんだ。」


「へえ、素敵な名前。風が輝くでかずきって読むのね。」


「そう、だからお店の名前も森つながりで。笑。」


「あ、フォレストって森って事ね。お店の名前はフォレスト物語か。でも、どうして物語つけたの？」


「うん、人それぞれに色んな物語があるでしょ。うちの店へ来て、サンドイッチ食べて一息ついて、また明日から仕事とか、学校とか、子育てとか、頑張って欲しくてね。それでこんなメルヘンチックな名前つけたんだ。おかしいですか。それに、フォレストだけだと他にもあるでしょ。笑。」


風輝は一気に話すと、桜子を見て笑った。


「ううん、全然ＯＫだし。おかしくないから。でも、あたしと年もそう変わらなく見えるのに、こんなお店持つなんてすごーい。」