タケルは、桜子に会いに病院へ急いでいた。


「桜子、具合はどう?」


「タケル、大丈夫よ。ありがとう。」


タケルは何か言いたそうに、桜子の髪を撫でた。


「どうしたの?何かあった?」


「うん、何もないさ。こうしてるだけで幸せさ。早く元気になるんだよ。」


「ありがとう。タケル…。」


タケルは、病室を出ると泣いていた。
言えない、僕の口からは…。僕達が兄弟だったなんて。
タケルは病院を出ると、そのまま行方がわからなくなった。

マスコミは、タケルの行方を追ったが、わからなかった。


「タケル…どうしたの?どこへ行ったの?」


「わからないんだ。今探しているけどね。」


桜子は、病室に来た社長やマネージャーに聞いたが成す術はなかった。

病室を出ると、社長が言った。


「タケルは今、海外にいるよ。場所は言えないがね。2人が兄弟だった事も、桜子には退院まで伏せていてくれ。マスコミのほうは大丈夫だ。」

「そうですか、わかりました。でも、現実は酷ですね。」


マネージャーはそう呟くと、ため息をついた。