あたしは桜子- 売れないモデル-

タケルがイタメシ屋さんと言ってたが、立派なイタリアンレストランだった。地下駐車場に車を入れ、真直ぐ個室まで誰にも会わずに入れる。
桜子は感心した。

「へえー、こんな店があるのね。」
2人はイタリア料理を堪能するとレストランを出た。


「明日からまた、頑張ろう。仕事場ではあまりしゃべらないようにしよう。この所、僕達の事を嗅ぎ回っている、たちの良くない連中がいる。」


タケルは車のミラーごしに後を見た。


「さっきからずっと、僕達をつけている車がいるよ。桜子、後を振り返るな。」


「え、どうしよう。大丈夫?」


「大丈夫さ。仮にパパラッチされても社長が何とかするさ。その筋には顔だから。」


タケルは、平然とそう言ってスピードをあげた。


「タケル、あなたって何者なの?あたしの知らない事、いっぱい知ってるみたい。」


「桜子、知らないなら知らないほうがいいさ。この業界はね…。」


桜子は、言葉もなかった。自分よりいっこ下の、たかだか22、3の男の子の言う事じゃないわ。