「亮晴、ハンド上手なったなぁ」
「やろ?」
キャッチボールしながらニカッと笑い合う。
「俺、高校でハンドするわ。んで、強いとこに行く。」
このことはちょい前に決めた。
「……………なんか嬉しいわ。亮晴ハンド好きになってくれて。」
「俺がこっちに転校した時にはもう、3年は部活引退してもうてたからな。高校ではちゃんと部活でハンドして、上手なって、レギュラー奪うて、試合に勝つ!」
「………うん、亮晴なら出来るわ。」
仁之助がらしくないこと言うとる。
いや、嬉しいねんけど。
「仁之助…なんか今日変やで?いつもならやかましいのに、おとなしいやん今日。」
「アホッ、お前がやかましいわ。」
これでこそ仁之助やな。
なんや、元気そうやんか。
良かった良かった。
「……………俺な、高校でハンドせぇへんねん。」
「……………え?」
何言うてんの?こいつ。
な、なんで…?
「っなんでや!お前めっちゃハンド好きやんか!高校でもハンドするんとちゃうんか!」
「………まあ聞けや。」
「っ、………。」
仁之助は悲しそうにわろてるから、俺はなんも言えんかった。
「………ハンドあるとこってめっちゃ少ないやんか。…俺は勿論ハンドあるとこ行こ思とったけど、親が許してくれへんのや。」
「………なんやねん、それっ……!」
「俺の頭ならもっとええとこいけるやろって。………どないしても入らしたい高校に入らせるつもりやねん。
……………すまんな、亮晴。」
言いたいことは山ほどあった。
なんでそんなん親に決められなあかんねん。
お前も謝るくらいやったら反抗したらどうや。
………そんな顔せといてや。
「俺はお前と同じチームで試合するもんやと思ってた。同じチームやなくても、試合で当たれたら嬉しいなくらいには思うとってん。」
「………そやな。」
「親には自分の気持ち言うたんか。」
数秒くらいやった思うけど、俺にはめっちゃ長う感じた。
「…………………………言えとらん。」
「っなんで!!言わんかったらなんも始まらんやろ!」
そう言い、胸ぐらを掴んだ。
「!そんな簡単なもんとちゃうねん!!」
仁之助も掴み返してきた。
こんな仁之助、初めて見た。
言いとうても言えん、今にでも泣きそうな顔やった。
俺は無意識に手をゆっくり離した。
仁之助も手を離した。
「………すまん、言い過ぎた。」
そう言い残し、ここからあいつは離れていった。
なんも言えんかった。
ーーー俺らはこの喧嘩でギクシャクしたまま中学校を卒業した。
