……………俺みたいなのを“当て馬”っちゅうんやろなぁ。
このことをキッカケに、当て馬について考えるようになった。
ー俺は、少女漫画に登場するんやったら、主人公の友人のポジションやと思う。
女子が好きそうな性格でも、容姿でもない。
姉ちゃんが持っとる少女漫画とかによう、関西弁の明るいやつが出てくる。
せやけど、そいつらは大抵、ヒロインと仲良うなっても、告って振られる。
俺は主人公とヒロイン以外にそいつらを好きなやつが出てきたら、毎度同情してしまう。
そいつらにとっては余計なお世話やと思うけど、好きになっても結ばれんぞ、って思てまう。
………関西弁やったら特に。
大抵そいつらはええやつやねん。
せやから俺は、主人公とかヒロインとかより、当て馬に幸せになって欲しい。
そう願うのは必然やと思う。
嫌われ役申し出とる俺が、初めは嫌いやった。
せやけど、察した。
俺は当て馬なんやと。
好きな子と、結ばれるなんて、夢のまた夢でしかあらへんと。
けどある時、俺が“当て馬”って検索してみたら、一人の俳優さんが出てきた。
その人は、恋愛モノの映画、ドラマによう出演しとる人で、全部、当て馬役らしい。
一つも実って無いって書いとった。
その人は、
『もう任せてください。振られ役のエキスパートです。』
って言うてた。
なんかわからんけど、その記事を読んだ後、泣きそうになった。
感動した。
かっこええなぁって思った。
そこから俺は、当て馬でもなんでもなったるわ!ぐらいの意気込みで過ごすようになった。
当て馬がいい、当て馬になりたいって思うことは、たぶん一生あらへんけど、俺のおかげでみんなが幸せになるんだったら、悪く無いかなって思えるぐらいにはなった。
ーーけど、出逢ってしもた。
漫画やったら、ヒロイン役やなって思う子やのに。
ヒロインには主人公と結ばれるのに。
俺みたいな当て馬、振られ役とは結ばれるはずないのに。
そんなこと、百も承知で。
けど、好きになってしもた。
運命に逆らえるはずあらへんってわかっとんのに、好きになってしもた。
どうしようもなかった。
気づいた時にはもう好きやった。
けど今回は、今回だけはどうしても譲りたくなかった。
本気で好きになってしもた。
当て馬が結ばれても、正直ええと思う。
………そろそろ当て馬が幸せになれる話があったって、ええんとちゃいますか?
