……………あかん。浮かれすぎた。



集合時間30分前に来たとか、めっちゃ浮かれとるやん。

初めて女子とデート?するからって……。

油断したら顔にやけてまう。



「あっ、甲斐くん。」


「っうおっ、」


「ごめん、そんなに驚かせるつもりはなかったんだけど。」


「…ちょっとボーっとしててん。気にせんでええよー(笑)」
 

「うん、わかった(笑)」


「……………千咲」


「っ!?な、名前」


「千咲って呼んでもええ?嫌やったら呼ばへんけど。前々から呼び方気になっとってん」


「………呼んで、ほしいです。」


「………千咲。」


「……………はい」



やばい、なんか照れる。



「ほな行こか、千咲。」



千咲って呼ぶたびに顔赤くするんなんなん?

こっちまで照れるやろ。

 

「………今日、どこ行くんですか?」



お礼させてもらうことになって、どこ行きたいか訊いたら、俺のおすすめのとこがいいらしくて。



「んー、電車乗って、適当なところで降りてぶらぶらするでもええ?」









……………待てや?こんなん、女子おもんないんとちゃう?


昨日ずーっとどこ行くか考えたけど、わからなすぎて、俺がたまにする、電車乗って適当に降りたところを散歩する、にたどり着いたねんけど。

そもそも行きたい場所やのぉて、したいことの方がおおとるきがするし。




…これ、女子はデートの定番の遊園地とか水族館とかの方が良かったやつとちゃうか?

うわっ、ハナから失敗した。最悪や……。



「ごめん、こんなん嫌よな。他に行きたいとこあったら……」


「…………あははっ、あははは!」



えっ?爆笑?こんなに笑っとる千咲、初めてかもしれん。



「ご、ごめん、ちょっと、おもしろすぎて」


「俺、ボケたつもりないで?」


「うん、知ってる知ってる。……っ適当なところで降りるって…!」


「?」



また、笑いの波が押し寄せて来たらしい。

 

「ほ、ほんとごめん。すごい珍しいパターンだなと思って。私も明日どこ行くんだろって考えてたけど、その発想はなかったすぎて心外で…!」



やっぱそうなんか!うわぁほんまに時間巻き戻したい。



「うん、でも楽しそうだねっ。私したことないからすごく興味湧いてきた。」


「…これでほんまにええの?遊園地とか水族館とかでもええんで?」


「え?私はこれがいいんだよ?」



ほんまにこれがいい、みたいな顔だった。

全然嫌そうやなくて、ニコニコ笑って楽しそうやった。


…ほんっまに、ええ人やなって思う。



「甲斐くんが考えて私に教えてくれたんだよね?………ありがとう」