休み時間、甲斐くんが私のノートを覗き込んできた。



「うわ、凄っ。遠江さんのノート、めっちゃ綺麗にまとめれとるやん」


「そ、そうかな…?」


「うん。俺、どっちかで言うとしたら字汚いほうやし、細かい作業とか向いてへんのよなぁ。尊敬するわー。」


「あ、ありがとうございます……?」



こういうの言われ慣れてないから、こういう時の返事に困る。



「ハハッ、うん。」



甲斐くんは笑いながら頷いた。



「……………なぁ、遠江さんさ、一学期の期末テストって何位やった?」



改まった顔で質問されたから、少し拍子抜けだ。



「えーと、15位?かな。」


「うおっ!めっちゃ頭ええ人やん」


「あはは、そうかな?」


「うん!俺の中やったら、神、ゴット。」


「言い過ぎだよー。…じゃあ甲斐くんは?」


「……………200位行くか行かないか辺り」


「あ、そっか……。まあ人それぞれだよね」


「優しいな、遠江さん。」


「え?」


「俺の友達ほぼ全員から、毎回めっちゃ笑われるねんっ!俺よりちょーっと順位がええからって。」


「あ、はは。仲良しなんだね」


「あからさまに苦笑いやな(笑)」



ハハッっと笑い合った。



「………あのやで、もうちょいで中間テストあるやん。良かったらでええねんけど、…勉強教えて頂きたい、です。」



珍しく、歯切れの悪い言い方だった。

俯いていた顔が恐る恐る上がっていき、目が合う。


答えは勿論、



「いいよ!私で良ければだけど。」


「!ほんまに?!ええの?遠江さんがええです!」


さっきまで申し訳なさそうな顔をしていたのに、今はあまりにも嬉しくて仕方がないっていう顔だったから、つい笑ってしまった。





待って………遠江さんが良いです?
他の子じゃなくて?

甲斐くんなら、勉強教えてくれる人ぐらいいくらでもいるだろう。



この言葉に他意は無かったのかもしれない。


けど、期待してしまいそうになった。



「遠江さんどないしたん?顔赤いで?」


「…ううん、気にしないでっ!ちょっと暑いなって思っただけだから!」


「………?そうか…?」


「うんっ!全然大丈夫だから」


「まぁ確かにちょっと暑いなぁ。」


「で、でしょ?」



ど、鈍感で良かったー。


うん、あの言葉に他意は無い。


私を頼ってくれただけ。



「よし、勉強しよっか」


「すまんなぁ、俺の勉強に付きおおてもろて。」


「ううん、全然っ!」