運転手はボディーガードではない、危険を察知してその場から逃げ出した。

私は目をつぶり観念した。

その時、私をからだを盾にして守ってくれたのが亮だった。

亮の腹部に刃物が突き刺さり、おびただしい血が流れた。

一瞬の出来事に何が起きたのか分からなかった。

亮は自分が刺されたにも関わらず、犯人の男を取り押さえて、拘束バンドで男の身を動けないようにした。

私は亮が倒れた音でやっと気づいた、亮が私を命がけで守ってくれたことを……

「亮」

私は気が動転して、どうすることも出来なかった。

料亭のスタッフが救急車と警察に連絡をしてくれた。

男は警察に連行され、亮は救急車で病院へ運ばれた。

俺は傷が思ったより深く、生死を彷徨った。

遠くに聞こえる声はまりえの声だった。

泣きながら俺の名前を呼んでいる。

俺は死んだのか、いや、まりえを残して死ぬわけにはいかない。

俺は必死にまりえの声がする方へ向かった。

なんだ、腹が痛い、目を開けるとまりえが俺の顔を覗き込んでいた。