真山さんはそう言って、シートベルトに手をかけた。

真山さんの顔が近づいて、目が合って、じっと見つめ合った。

鼓動がドクンドクンと打って呼吸が苦しい。

唇が数センチと近づいたが、真山さんは私から離れてシートベルトをはめてくれた。

あんなこと言われたが、意識してるのは私だけ?

(あの、ほかに候補がいるなら、そいつじゃなくて俺が)

そんな気はなかったのかな。

いつもはおしゃべりするのに沈黙のままマンションに到着した。

「すぐ夕食の支度しますので、シャワー浴びてきてください」

シャワーの水が私の身体に流れる、あ〜あ全然水弾かない。
真山さんの肌は水を弾いてキラキラしてたっけ。

私は首を横に振る。

駄目だ、がっくりされちゃうよ。

私をがっくりさせないためにその気があるように言ってくれたの?

思ったよりバスタイムが長かったのか、真山さんが声をかけてきた。

「まりえさん、大丈夫ですか」

「大丈夫よ」