「懐かしいなぁ⋯」
「何が」
あの日の事を思い出して呟いた言葉にエリーが不審者を見る様な目で見てきた。
「いや、ね。唯くんと出逢った日のことを思い出したの」
「出逢ったって⋯あの傘の話?」
「そうそう。ほら丁度今日雨だし。雨の日は当然思い出すでしょ」
教室の窓のには強い雨粒がバチバチと音を立たて当たり、ツーッと滴が窓を伝う。
「あの頃の翼はイケイケだったよね」
「自分でもあんなに積極的にいけたのが謎だよ」
「休み時間も放課後もずーっと阿久津くん追い掛けて人が違うんじゃないかってくらいだったね」
「あの頃は大好き!って感情しかなかったからね。何としてでも両想いになりたい!って」
「そのくらいの勢いが今もあればいいのに」
「⋯そうなんだよねぇ」
私の言葉にエリーは他人事みたいに、と苦笑いをした。



