「あっ⋯、おはよう、唯」 小さな声ながらもちゃんと耳に届いた可愛らしい声。 それは教室の入口にいた私たち二人のすぐ後ろから発せられたもので。 唯くんと同時に後ろを振り向けば、サラサラとした黒髪をボブヘアーにした女の子が立っていた。 「おお、沙弓(さゆみ)」 その女の子を視界に捉えた瞬間、僅かに表情を和らげた唯くん。 その光景を見てチクリと胸が痛んだ。