「翼ってさあ、ほんっとーに簡単だよねぇ」
ポチポチとスマホの画面を弄りながらこっちを見もせずにそう言ったエリーははぁ、と大きなため息を吐いた。
「簡単って⋯?」
どういう意味?と聞き返した私にやっと視線をこっちに向けたエリー。
「映画一緒に観てくれたから優しい?次に見る約束したから優しい?大好き?簡単すぎるっつーの」
「だって本当のことじゃん」
「本当のことってねぇ⋯それ彼氏として当たり前だから!」
「当たり前だろうが何だろうが嬉しいものは嬉しいよ。それに唯くんは優しいところいっぱいあるよ」
ああ見えて彼は優しい一面も持っているんだ。
例えば電車なんかでお年寄りを見つけたらすぐに席を譲るし。
大股開いて座って周りに迷惑かけていたり、電車の中で大声で電話している人なんかがいたらその人がどれだけガラが悪くても注意しにいくし。
まあその注意の仕方で相手を余計に怒らせる事もあるけどさ⋯。