戯れ、ランデブー。 【完】






◇◇◇






「キャラメル!」

「塩」


私と唯くんの尖った声が重なり、睨み合う。



というのも、昨日の埋め合わせで映画館へとやってきた私たちはフード&ドリンクを買える場所の前でもうお約束ともなった言い争いを繰り広げているのだ。


私はポップコーンはキャラメル味派で、唯くんは塩味派。

毎回毎回それで揉める私たちだけど毎回毎回私が折れている。



「いっつも塩じゃん!今日こそは譲ってもらうんだから!」

「んな甘いの食えるかよ、塩にしろ、塩」

「じゃ、じゃあジャンケンで⋯」

「却下。はい、チケット買ってきて」



だから今日こそはと意気込んでみたけれど手に握らされたお金と、クルッとチケット売り場の方に回された身体。

ハッと後ろを振り返れば唯くんは自分と私の分のドリンクとポップコーンの塩味を注文したいるところだった。