「唯くーん、お待⋯」
時間にして三分もなかったというのにその間にも唯くんは沙弓ちゃんと何かを喋っていたのか、彼の机の傍には沙弓ちゃんがいた。
まあ、唯くんの机の近くにいるっていうことは沙弓ちゃんから唯くんに話し掛けて来た可能性が高いから仕方ないけど⋯って、こんな事考えている自分が格好悪い。
「お待たせしましたー⋯」
未だに私に気付かずに話し続けている二人にムッとしながらも傍に寄る。
その時、ほんの一瞬だったけど沙弓ちゃんの表情に影が出来たのを見逃さなかった。
だからだろうか。沙弓ちゃんに気を取られて唯くんの手が私に伸ばされていた事に気付かなかったのは。



