戯れ、ランデブー。 【完】



「その時、沙弓ちゃんと一緒にいたのも見た⋯」


ポツリと呟く様に言った言葉はちゃんと唯くんに聞こえていたようで、



「あー、バイトの帰りにたまたま沙弓と会ったんだよ」



悪びれる様子もなくあっけらかんとした唯くんに複雑な気持ちになる。

別に悪い事してるわけじゃないし、悪びれる必要もないんだろうけど私がモヤモヤしている事に気付いていないんであろう唯くんに苛立つ。


でももしかしたら私の気持ちなんて分かっていて、それでもそんなもの関係ないフリをしているんだとしたら私は立ち直れないかもしれない。



「沙弓は家の方向が同じだから一緒に帰っただけ」



“だけ”と言い切る唯くんと私の間には大きな隔たりがある。