「ほら、阿久津くん来たよ」


そう言いながら教室の入口の方を指すエリーの指を辿ってみれば、ゆるゆるのネクタイをぶら下げて、大口開けながら欠伸をする唯くんの姿が。



「ちょっと行ってくる」

「はいよー」


エリーにそう告げてから立ち上がり、唯くんの元へと駆け寄る。

フワッと香るのはムスクの香り。唯くんにピッタリだ。



「唯くん、おはよう!」

「⋯はよ」



嗚呼、今日も眠そうだ。



「唯くん昨日も夜更かししたの?」

「先輩の家でグダってた」

「そうなんだ⋯」

「⋯ん?翼何か唇ギトギトしてる」

「⋯えっ、」



リップグロスを付けた事をアピールしたくて若干アヒル口にしていたからか、唇の変化に唯くんは気付いてくれたみたいだ。

だけどこの男、とんだ勘違いをしている。



「ほら、」

「ちが、んっ⋯」



私が違うというよりも早く、親指でグイッとそれを拭った彼。

なんてことを⋯。